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機関誌THE YMCA

THE YMCAは日本YMCA同盟が発行している機関誌です

 

<最新号のオピニオン> 気候危機を、市民の力で変えていく

認定NPO法人 FoE Japan理事  吉田明子さん

 FoE Japan(エフ・オー・イー・ジャパン)は、世界73カ国で活動する「Friends of the Earth International」のメンバー団体として、日本では1980年から活動しています。当初、若い世代との接点はあまりなかったのですが、2018年にスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが一人で国会議事堂前に座り込みを始めた数カ月後、日本でもやろうと10数人で集まったことがきっかけで、日本でも徐々に若者たちの気候ムーブメント「Fridays For Future」の動きが広まっていきました。FoE Japanなど環境団体もこの動きをサポートしたり連携したりしており、2023年に は新たなネットワークとして再エネ100%と公正な社会をめざす「ワタシのミライ」を発足。署名活動や各種イベントの運営、提言活動などをしています。

 若い人たちは学校でSDGsなども学んでいますから、知識も関心も高いです。またここ数年、暑さで体育の授業や部活ができなくなるなど、日常生活にも影響が生じているので危機感も持っています。それなのに国のレベルでは実効性のある対策が見えないし、むしろ逆行している。知れば知るほど将来に絶望感を抱いてしまう若者たちは少なくありません。

 FoEでは環境問題を格差の問題でもあると考えています。先進国といわれる北側の国々が大量に化石燃料を使ってきた影響を今、南側の国が受けているという南北の格差問題。また、富裕者層よりも貧困層にしわ寄せがいく貧富の格差。現世代が残した問題のツケを将来世代が負う世代間格差など。私たちはこの格差を是正し、平和で持続可能な共生社会をめざすため、「気候正義(Climate Justice)」を唱えて活動しています。

 ところで、温室効果ガスの削減というと、暑い日に冷房を我慢するような節約と考える方がいます。経済の発展と相いれないという意見も聞きます。しかしCO2削減は、生活レベルを変えなくても、たとえば電力契約を風力や太陽光など再生可能エネルギー由来のものに切り替えるだけでも半減できます。省エネタイプの家電を選ぶ、家の断熱効果を高くする。そういった工夫でも減らせます。オンライン会議の普及も、削減につな がりました。私たちは「自然エネルギー100%で豊かに暮らせる社会を創る」ことは可能だと考えています。

 とはいえ気候危機は深刻です。今すぐ対策を講じても簡単に止められる状況ではありません。それでも私は、「動けば、変化は起こせる」と信じています。

 国の施策はなかなか思い通りになりませんが、地方自治体の多くがすでに2050年までのゼロカーボンを目標に掲げ、再エネ・省エネに取り組み始めています。また世界でも日本でも、市民の動きが政策を変化させた事例はたくさんあります。環境先進国といわれるドイツでは、酸性雨の問題やチェルノブイリ原発事故から人々の意識が高まり、脱原発を決め、再エネへの道を選びました。市民があげた声が広がって実現したのです。日本でも、いくつかの原発計画が中止になったり、条例ができたりした背景には市民の力がありました。

 気候危機は、農業など第一次産業や、教育、福祉、貧困問題など、あらゆる分野と関わる問題です。環境団体だけが取り組むべきものではありません。私たちは関わる人たちを増やし、つながりを拡げることで危機を乗り越えたいと思っています。YMCAは青少年をはじめ多様な方々とのネットワークをもっていますし「持続可能な地球」をビジョンに掲げています。環境教育をしたり、電力契約を再エネに切り替えたり(パワーシフト) もされている。ぜひ一緒に次世代のために活動していきたいと、期待しています。    (聞き手・文 編集部)


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