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機関誌THE YMCA

THE YMCAは日本YMCA同盟が発行している機関誌です

最新号のオピニオン

日本YMCA同盟からの提言

自ら職業を選択するために一人でも多くのロールモデルを
NPO法人フェアスタートサポート代表 永岡 鉄平

フェアスタートは、児童養護施設や里親家庭等で生活をしている中学生高校生たちへ「就職相談」「職業適性検査の実施」「会社見学や就労体験のコーディネート」などの就労支援を行っています。社会的課題でもある「若年層ワーキングプア」について、高校卒業後に就職し施設を出て自立した若者たちの数年後を見てみると、その半数の月収は15万円に満たないという調査結果があります。その要因として考えられることの1つは、「早期離職率の高さ」です。せっかく正社員として就職できても、1年以内の離職率は50%近くまで達しているというデータがあるのです。
この原因として、キャリア教育の不足やお金・保証人不在を背景とした就職の仕方があります。「近くに寮付き(の就職先)がそこしかなかった」「学校の先生にすすめられた」、将来やってみたい仕事、なりたい社会人のイメージが具体的に持てないと、このように周りに流されるように就職を決め、自分で決めた感の低い状態で働き始める若者も少なくありません。さらに、18歳という年齢で保証人なしに住居を借りることは今の日本ではとても難しいので、就職と同時に住居問題を解決する方法として寮付きの就職を選択しやすい文化も依然根強くあります。就職という大きな環境の変化とともに若者たちの多くは「失敗できない」という独特の緊張感、孤独感のなかで暮らしていきます。心が折れてしまう若者は少なくありません。職場に恵まれなかったり、上手く溶け込めなかったりすると、何か辛いことがあった際に耐えられず仕事を辞め、収入が途絶えます。結果、目先の収入を手っ取り早く得るために非正規雇用の世界へ移行します。住み込み就職を選択した若者の場合、同時に住居も失い、正規の再就職はより難しくなります。結果としてワーキングプアとなっていくのです。
こういった若者たちの背景を踏まえて、私たちは児童養護施設におけるキャリア教育に力を入れています。将来の就職活動の際に、職業をこれまでの経験や関心にもとづいて自分の意志で選択すること、「自分で決めた」という意識を持つことは、簡単に投げ出さないための第一歩になると考えています。18歳という周りが決めたリミットで急いで考えるのではなく、時間をかけたキャリア教育を通じて「自分がどう生きていくか」を考えることで、ワーキングプアは減らせるのではないかと思っています。
児童養護施設には、日常で関わる大人の数が少なく、職業観をイメージする機会に恵まれていない子どもも多くいます。ここには第三者によるエンパワメントが絶対的に必要です。子どもたちが施設という生活の場においてもさまざまな人との関わりや体験を通して、自己肯定感を育みながら、多くのロールモデルを得ることでキャリアの精度を上げていく。そして職業選択に広さと深さを生み出すことが、一人ひとりの豊かな人生を作っていくに違いありません。(横浜YMCA 会員)



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