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機関誌THE YMCA

THE YMCAは日本YMCA同盟が発行している機関誌です

最新号のオピニオン:ゲーム・スマホ依存症を予防する
次世代のための「スポーツ・イン・ライフ」

横浜YMCAオルタナティブ事業部長 太田 聡

   子どもがインターネットを利用する時間数は年々増えており、2021年度の内閣府調査によれば、平日1日あたり平均4時間24分にのぼっています。コロナ禍でオンライン化が進んだこと、自宅で過ごす時間が増えたことも一因と言われており、ゲーム・スマホ依存症になる子どもも少なくないなど、社会問題になっています。一方でスポーツ・運動の頻度は減り続けているという調査もあり、運動よりもネットを使う時間が長くなっている実態がうかがえます。

 デジタル化が進む社会の中で、子どもたちが心身ともに健康で豊かな生活を送るにはどうすればいいのか。横浜YMCAは昨年度、スポーツ庁から助成を受けて『ゲーム・スマホ依存傾向にある小中高生を対象とした、運動・スポーツの意欲向上と生活時間の変化の実証実験』を実施。専門家の協力を得ながら、5日間のプログラムを2期開催したほか、保護者と指導者のためのセミナーも行い、その変化を検証しました。
 プログラムの初回には、日本初のインターネット依存外来を開設した国立病院機構久里浜医療センター臨床心理士の三原聡子さんから依存症について学習。ゲーム・スマホと上手に付き合うためには適度に体を動 かすなど、ゲーム・スマホ以外の活動も大事にする必要があることを学びました。神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科教授の笹田哲さんからは、眼や頭の疲れをとるための「メンテナンス体操」を習い、 実際に体が気持ちよくなることを体験しました。

 次に運動・スポーツ体験をしたのですが、依存傾向のある子どもたちはもともと運動習慣がなく、苦手意識もあるため、どういうスポーツなら継続できるのかを事前に調査するところから始めました。結果、「疲れない、痛くない、楽しそう」な内容で、「失敗しても目立たない」「恥ずかしくない」スポーツを指導者と一緒に考案。スポンジロケットをキャッチする「ロケットキャッチ」や、野球とキックベースを合わせた「ボールベース」、最終日には三浦海岸で「謎解きハイキング」も楽しみました。参加した子どもたちからは「ボール遊びが楽しかった」「依存症について知ってよかった」等の声が聞かれたほか、専門家による行動分析からも、プログラム後には好奇心が増したり意欲が向上したりと、その効果が実証されました。

 期間中、保護者向けに行われた三原先生のセミナーによれば、依存症の予防には、興味関心の幅が狭くならないよう他の活動もできる環境を作るのが大人の役割とのこと。ゲームばかりやる子どもを頭ごなしに否定するのではなく、社会環境の問題として、大人自身の生活も見直しながら共に取り組む必要が指摘されました。今回の実証実験は短期的な試みでしたが、YMCAもまた、デジタル化が加速度的に進んでいく社会の中で、子どもの生活環境に合わせたプログラムの提供が求められていることを改めて実感しました。

 YMCAは今から約150年前、雪の季節にも青少年がスポーツを楽しめるようにとバスケットボールを考案しましたが、現代においても常にプログラムを工夫し、子どもたちがゲーム・スマホだけにのめり込まないように、心身の豊かな成長を目指し続けたいと思います。 ( 聞き手・文:編集部)

◆マンガで見る「デジタルとの上手なつきあいプロジェクト」◆
今回のプロジェクトをぜひ多くの子どもたちに知ってほしいと、マンガによる報告書を作り、下記サイトで公開しています(ダウンロード無料)。神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科の笹田哲教授による「メンテナンス体操」も掲載しています。ぜひお子さまとご一緒にご活用ください。
https://onl.bz/tctDHRH    


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