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機関誌THE YMCA

THE YMCAは日本YMCA同盟が発行している機関誌です

 

<最新号のオピニオン> 変化の時代の「ユースエンパワメント」とは

アジア・太平洋YMCA同盟前総主事/ワイズメンズクラブ国際協会東日本区2024-25理事  山田公平さん

 私がYMCAのスタッフになったのは1979年でした。大学進学への勢いと同時に、YMCAの進学教育(予備校)や専門学校教育も伸びていった時代でした。それから45年。社会はどんどん変化していき、国際化、少子高齢化、そして今日ではさらに速いスピードでデジタル化が進んでいます。変化のスピードは、これまでの経験にない速さです。

 このような時代の青少年育成は、教える教育というより、自分で動いて自分の関心分野に気づいたり、新たな喜びを感じる体験をしたり、自分に合った学習方法を開発していくことが求められます。新型コロナの後、私たちの在り方、学び方も変わりました。これまでの考え方や経験値に頼るのではなく、新たな学びを体験によって見つけられるように、世界中のYMCAが工夫をしてユースをサポートし、ユースエンパワメントに力を入れています。

 「エンパワメント(empowerment)」とは、もともと「権限を与えること」「力をつけること」といった意味で、昨今では福祉や医療、ビジネスの現場でも使われています。たとえば企業では、上司の指示に従うトップダウンとは逆に、自由度を高めて従業員の主体性や能力を育てることを意味し、社会の変化に備える方策としても活用されているようです。

 YMCAの「ユースエンパワメント」とは、若者が自分たちの経験や気づきから、自分の在り方、社会の在り方を考え、自ら変えていく力を身につけることです。そのためには、周りにいる仲間の知恵、新たな情報や経験から学ぶことも求められます。同時に、結果がどうなるか分からなくてもやってみることがユースに新たな気づきと自信を与えることになると考えています。YMCAは創立当初から180年余にわたって、こうした経験によってユースエンパワメントを生み出してきた団体です。

 私自身、若い時にアメリカで90歳の一人暮らしの女性に出会ったことが、福祉に関心を持つきっかけになりました。自分の枠を飛び出すような活動から新たな関心が生まれ、もっとやってみたいという意欲となり、これまでとは違う自分に出会う経験をしました。自ら行動する中で試行錯誤し、人とつながり、自信や喜びを得て、生きがいを見出していく。若い人たちにこういった体験の機会を作ることが、青少年団体だけでなく地域社会の役割ではないか。このような思いが、「Y’s ×SDGs ユースアクション」(▼2-3面特集)を生み出す動機になりました。

 2022年に始められた「ユースアクション」は、SDGsに掲げられた社会的課題に取り組もうとするユースグループを、YMCAとワイズメンズクラブが助成するプロジェクトです。YMCA内外の高校生や大学生によるグループが応募し、社会課題に目を向けて動き出し、これまでとは違う喜びや気づきを体験しています。まさにユースエンパワメントにつながる機会であり、このような体験こそが未来の社会を創るのではないかという声が、関係した大人たちからも聞かれました。若者たちに“投資”し、若者たちの本当の成長を生み出すと、思いもよらない大きな変化を生み出す力になることは、YMCAの歴史が証明するところです。YMCAもワイズメンズクラブも、永年にわたる知見を活かし、今こそ未来社会の開拓者となるユースをエンパワーしていくことが期待されています。


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