機関誌THE YMCA
THE YMCAは日本YMCA同盟が発行している機関誌です
<最新号のオピニオン> 分断の世界の中で、「みつかる。つながる。よくなっていく。」
世界YMCA同盟総主事 カルロス・サンヴィー
⸺第14回日本YMCA同盟協議会(6/21-22)基調講演より⸺
昨日、日本で参加した礼拝で、私の母国トーゴでも馴染みのある讃美歌が歌われました。トーゴでこの歌は「苦痛に耐えきれなくなったとき、癒しを見出だせる場所がある」という「救い」をテーマとした歌詞になっています。私には日本語はわかりませんが、私は皆さんとつながっていると実感しました。と同時に、「日本のYMCAとは何なのか」「そもそもYMCAとは何者なのか」という問いが沸き起こってきたのです。
日本のYMCAの皆さん、Who are you? あなたは誰ですか。
日本のYMCAは、ウクライナの避難者を快く受け入れてくれました。パレスチナにも募金をし、祈祷会も行って支援をしています。世界YMCAはとても感謝しています。また私は、日本で宗教の違いによる衝突が起きたという報道を聴いたことがありません。皆さんはキリスト教を基盤としながらも、宗教の違いを越えて地域社会と調和し、共に活動しています。
今朝、この会場に展示されたジョー・オダネルの原爆写真展を見ました。中でも「焼き場に立つ少年」と題された、幼い弟の遺体を背負って火葬場に立つ少年の写真は、内臓をえぐられるほどに私の心に深く突き刺さりました。80年前の、あのような惨禍の後、日本のYMCAは被爆者と共に平和運動を推進してきました。皆さんは憎しみの連鎖に陥ることなく、二度と悲劇が起こらないようにと行動してきました。世界は今、その姿勢に学ばねばなりません。あさって私は広島に行きます。日本被団協の方にも会う予定です。原爆の脅威をよく知り、核兵器廃絶に向けて共に歩みたいと思っています。
同時に日本のYMCAは、過去の過ちと向き合い、歴史について語り、国際交流活動を続けています。たとえば日本には韓国YMCAがあります。両国の悲しい歴史を越えて加盟関係を保ち、交流を続けていることを私たちは高く評価しています。こうした日本のYMCAのアイデンティティーは、分断する世界の中で重要だと思っています。
今、世界にはいくつもの分断があります。ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナ、東アジアの歴史的緊張など。国家間の対立だけではありません。富裕層と貧困層、男性と女性など、地域社会にもさまざまな分断があります。その中でYMCAは、苦しむ人の声を聴き、癒しをもたらす存在でなければなりません。
日本のYMCAは、「みつかる。つながる。よくなっていく。」をスローガンに掲げています。このスローガンを聞いて私が思い浮かべたのは、イエスの衣服に触れることで病気が治ったという、聖書の奇跡の物語です。12年間も病に苦しんでいた女性がイエスと出会い、イエスとつながることで癒されたのです。私たちYMCAも、出会った人々が癒しのエネルギーを感じられるような存在でなければなりません。世界は傷つき、癒しを必要としています。私たちは最も疎外された人々と出会い、抑圧された人の声を聴き、つながり、支え合うことによって希望をもたらす。イエスの愛と奉仕の精神を体現することによって、世界を変革(Transform)していく存在であるべきです。これが、私の考える「みつかる。つながる。よくなっていく。」であり、分断された世界に癒しをもたらす、YMCAの役割です。
日本の皆さん、どうかそのアイデンティティーを大切にしてください。そして力を発揮してください。YMCAは大きな家族のようなものです。一人で解決できない問題も、皆で共有す れば力になります。世界が直面する課題は深刻ですが、共に手を携えて、歩んでいきましょう。(文責・編集部)
*帰国後、カルロス総主事は8月6日、平和のメッセージを投稿しました。メッセージはこちら➡