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機関誌THE YMCA

THE YMCAは日本YMCA同盟が発行している機関誌です

 

<OPINION>YMCAのキリスト教的アイデンティティー

 

アジア・太平洋YMCA同盟 事業部責任主事 スニータ・スナ

 YMCAはキリスト教の精神に基づいて設立された団体ですが、ご存じのように多くのアジア・太平洋諸国においてキリスト教は少数派です。フィリピンや韓国など一部を除き、タイ、ベトナム、ミャンマー、バングラデシュ、そして日本も、私の出身国であるインドも、キリスト教徒は人口のわずか数パーセントです。

 これらの国々でYMCAは、社会の少数派として謙虚に、他の信仰や思想をもつ人々と対話を重ねて活動しています。キリスト教の教義を押しつけることはしません。しかし「すべての人が、神から与えられた尊い命と無限の成長の可能性をもっている」というキリスト教の人間観を土台に、あらゆる人に対して「精神・知性・身体(Spirit, Mind, Body)」の全人的な成長を願って活動しています。国籍や民族、宗教、性別など一切の違いを乗り越えて、困難をかかえる人々の声を聴き、地域の課題に応える。イエス・キリストが示した「愛と奉仕の精神」を行動で表すことで、社会に必要とされる存在であり続けていく。これが、少数派であっても社会に影響力をもってきたYMCAの、人に仕えることによるリーダーシップの源泉です。聖書でいう「地の塩」「世の光」の働きであり、YMCAの中核となるキリスト教アイデンティティーです。

 これは、キリスト教人口の多い国でも同じです。世界のYMCAには現在6500万人が関わっていますから当然、クリスチャンではない会員も大勢います。思想信条の壁を越え、誰に対してもオープンなのがYMCAです。

 19世紀に作られたYMCAの正章には、「JOHN 17:21(ヨハネによる福音書17章21節)」が刻まれています。これは「すべての人が一つとなるように」という聖句です。この言葉は、全員が同じ考えをもつという「画一性」を求めるものではありません。違いを消し去るのではなく、違いを尊重し、互いを受け入れることによる一致をめざすものです。誰もが多様なままで尊重される。そんなコミュニティーの構築を、YMCAは使命としてきました。

 多様なままでの一致は簡単ではありませんが、このYMCAのアイデンティティーは、現在の世界が直面している分断や対立、孤立や不平等に対して一つの希望を示していると私は考えています。そしてまた日本のYMCAのブランドスローガン「みつかる。つながる。よくなっていく。」は、この希望へ向かう具体的なプロセスをよく表していると思います。

 実際にイエス・キリストは、病気の人や社会から疎外された人々に出会い、彼らに奉仕し、癒すことによって、希望へと導かれました。さまざまな課題をかかえた人々と心を開いて出会い(=みつかる)、思いやりをもってつながる。そして、出会いとつながりが、変革(=よくなっていく)という果実をもたらしていく。これこそが永 年にわたり私たちがめざしてきたYMCAのリーダーシップのあり方であり、分断された社会における架け橋となる働きです。日本のYMCAのいう「ポジティブネット」⸺互いの存在や個性を認め合い、高め合うことのできる、善意や前向きな気持ちによってつながるネットワーク⸺は、これを的確に表す言葉として、今の社会に重要です。

 今、「世界YMCA Vision2030」のもとでアジア諸国のYMCAも、気候正義や人権擁護、若者の雇用、地域福祉などの課題に取り組んでいます。いずれの課題も深刻ですが、私たちはYMCAのアイデンティティーを大切に、この長く険しい道のりを、共に手を携えて歩んでいきましょう。

 「早く行きたいなら一人で行きなさい。遠くまで行きたいなら、皆で進みなさい」(アフリカのことわざより)

*「第15回日本YMCA同盟協議会」基調講演より


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