 |
|
|
 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
 |
|
|
|
医療ソーシャルワーカーの調査
「S家の事情」 |
|
|
|
|
新築したばかりのSさんはローンもあり、子どももまだ成人していません。奥さんが働いているので、障害者年金を受けて暮らしていけるのかもしれませんが、Sさん自身の希望は休職期限内に社会復帰したいというもの。会社も好意的に受け止めています。 |
|
|
|
 |
 |
|
|
|
理学療法士や作業療法士の評価
「身体機能の回復見込は?」 |
|
|
起きて立ち上がることは可能。歩行トレーニングを重ねれば、左片麻痺も快方に向かう見込みはあると思われます。しかし、不自由なく歩行できるかどうかは、今後の理学療法によるところが大きいようです。また、左上肢の麻痺はかなり重度。日常生活で実際的に使える可能性は、作業療法の経過次第です。 |
|
|
|
 |
|
|
|
|
| それは勤務中に起こった。 |
「今、どこにいるのか分かりますか?」救急医が大きな声で問いかけます。会社で突然、倒れたSさん(42歳)。問いかけに何とか答えようとしますが、言葉は出てきません。Sさんの目からは大粒の涙が・・・。
■Sさんが突然、倒れた原因は脳卒中でした。脳の血管が詰まったり破れたりして脳の一部分に血液が流れなくなることで脳に損傷が起きる疾病です。 |
| 下された診断は左片麻痺。 |
■脳卒中を起こした場合、身体が麻痺して動かせない、筋力が低下して歩けない、あるいは言葉がスムーズに話せないといった障害が残ることが少なくありません。
Sさんの場合もそうでした。脳卒中そのものは、救急医の適切な処置で進行をくい止めることができたのですが、左半身が自由に動かせない左片麻痺の状態に。さらに、構音障害のためにしゃべりにくいという状態にも陥ってしまったのです。そこで、脳卒中の症状は改善したSさんは、同じ病院内にあるリハビリテーション部門に移ることになりました。 |
| チームアプローチのスタート |
■リハビリテーションの各分野から専門家が集まり、協力して各自の立場から支援することがチームアプローチ。
幸いなことに総合病院は、チームアプローチに熱心。リハビリテーション医師を中心に理学療法士や作業療法士などの専門スタッフで構成されたリハビリテーションチームが、Sさんを温かく迎え入れました。
■『より良く生きる権利』を回復すること、それがリハビリテーションの目標です。病気や事故などで運動機能や言語機能などの身体機能を損なった患者さんの機能回復はもちろん、精神的にも大きなダメージを受けた患者本人、そして家族のサポートを行っていくのです。
そのためには、まず、患者さんの症状を把握し、適切なリハビリテーションプログラムを組むことが重要です。それだけでなく、辛い状況に陥った患者さんや家族の不安、苦痛を受け止めることも不可欠。そして、病気以前の日常により近い状態に復帰するという目標に向かって治療に取り組むのです。こうしたことは一人の力でできることではありません。多くの専門家の知識と技術が集まってチームを組むことによって、初めてひとりの人間が抱えている障害を、あらゆる側面からトータルにとらえ治療することが可能なのです。
身体的にも精神的にもダメージを受け、これから先どうなるのか大きな不安を抱えたSさん。しかし、多くのチームスタッフが助けてくれることを知って少しホッとしたようです。
こうしてSさんの「社会復帰」を目指す日々が始まりました。 |
| カンファレンス・評価会議は何回も開かれる |
チームアプローチの各メンバーは、まず、それぞれの専門分野からSさんの障害レベルを調査しました。
■チームアプローチで重要なことは、スタッフが患者さんの障害を総合的に認識すること。カンファレンスは、そのための会議でリハビリテーション中、何回も開かれます。
身体機能は、使わないとすぐ衰えるもの。リハビリテーションの早期開始は重要です。スタッフは、家族に治療方針をきちんと説明し納得してもらいました。
さあ、Sさんのリハビリテーションがスタートです。
■リハビリテーションは、家族と専門家との協力がとても大切。目的に向かって、全員で取り組みます。 |
| ベッドから起き上がる、リハビリテーションの第一歩 |
Sさんの運動機能は、わずかの間にすっかり衰えていました。ベッドから起きあがる、それだけのことがSさんには辛いことです。
■身体を起こし車イスへ移動するために必要な動作を、何度も何度も練習します。理学療法士がきめ細やかに指導していきます。
なかなかうまくできず悔しくても、それを言葉にできない苦しさは、スタッフ全員が理解しています。しかしSさんの目標は「職場復帰」。何とか目標を実現してもらおうと、スタッフは心をこめて励まします。 |
| パソコンがコミュニケーションを手助け |
奥さんが、Sさんはパソコンを使えることを思い出しました。「パソコンがあれば、もっと楽にコミュニケーションを取れるかも知れない」、そう考えた奥さんは、医師の許可を得てノートパソコンを持ってきました。
■作業療法士も賛成でした。作業療法のアプローチ法は、患者さんの症状や希望によってさまざま。Sさんにとって、パソコンは有効な方法だと判断したのです。
発症前は、両手で打てたキーボードも、今は右手の指1本で打たなくてはなりません。一文字、一文字打っていくSさん。自分の思いを伝えたいと必死で取り組みます。 |
| スタッフの一人が気付いたSさんの状態 |
■理学療法士による歩行練習、作業療法士による日常動作の練習(指導)は順調です。しかし、カンファレンス会議で、看護師から「Sさんは、最近、疲れ気味のようです」という報告がありました。
意欲的に練習するSさんは模範生。たくさん練習すればそれだけよくなると考えて、少し自主練習をやり過ぎていたことが分かったのです。
■これこそチームアプローチです。チーム全員でSさんをフォローしていたからこそ、Sさんの状況を素早く把握することができたのです。 |
| 辛い告知、でも、その先を見つめて |
車イスを使えば、病院内を自由に動けるようになったSさん。しかし、左半身麻痺の症状は残り、自分の足で自由に歩けることはできません。これは最初から予想されていたことでした。しかし、初めからSさんに告知するのは、やる気を損なう可能性がありました。「落ち着いてから話そう」それが、チームの方針でした。
■リーダーのリハビリテーション医師は、Sさんに病状を告げました。Sさんにとっては辛い告知。しかし、障害があってもすべての可能性がなくなったわけではありません。リハビリテーションはプラスの医学。障害の回復を目指すだけでなく、残された機能を使って、新たな能力や日常生活を送る可能性を創り出すのです。 |
| 家族、家庭へのサポート |
いよいよ、Sさんの退院時期が近づいてきました。その前に、家庭をはじめいろいろな環境で生活することを想定し、多くの問題をクリアしなければなりません。
■理学療法士、作業療法士、介護福祉士、医療ソーシャルワーカーは、実際にSさんの家に調査に行きました。その結果をもとに、家族の介護や住環境の改善についてアドバイスします。
設備の整った病院では日常生活の動作が可能になっても、家庭ではいろいろ問題が考えられます。たとえば入浴だけでも、Sさんや家族にとって大変な作業です。
■カンファレンス会議の結果、介護福祉士が入浴介助や食事指導を中心に派遣されることになりました。脳卒中を発症したSさんは、それまでの食生活を見直す必要があります。また、左上肢の麻痺が残ったSさんが食べやすい献立や道具の使い方など、介護する家族へのアドバイスも行われます。 |
| 退院、そして職場復帰を目指して |
■医療ソーシャルワーカーが、Sさんと一緒に会社へいくことになりました。職場復帰について相談するためです。
「営業から事務職に変わってはどうですか」と、会社から提案されました。療法の一環として練習していたパソコンが、職場で役に立ちそうです。それからのSさんは、作業療法士の指導を受けながら片手でパソコンを操作する練習にますます熱がこもるようになりました。
■言語聴覚士の指導で、Sさんの音声は、まだしゃべれないにしても少しずつ、明瞭になってきました。話せるようになるのも、もう間近です。それはSさんにとって大きな自信となっていきました。
■退院後も、当分、Sさんは通勤訓練をかねてリハビリに通うことになりました。身体の機能もずいぶん回復してきたようです。
リハビリで汗をかき、通院で緊張を強いられるSさんにとって自宅へ戻ってからの入浴は欠かせません。温かいお風呂を楽しめるのは介護福祉士の援助があってこそなのです。
ある日、Sさんから担当の介護福祉士に向かって、一つの言葉が投げかけられました。
「カ・イ・ゴ・シ・サ・ン、イ・ツ・モ・ア・リ・ガ・ト・ウ」
ゆっくりではありますが、はっきりとした言葉遣いで告げられた介護福祉士への感謝の言葉。
予想もしていなかったSさんの言葉に、介護福祉士は言葉を返すことができません。
笑顔を返すのが精一杯でした。
こんな瞬間が、介護福祉士の大きなやりがいとなっていくのです。
こうして、チームアプローチによるリハビリテーションの結果、Sさんの社会復帰は実現。現在は、パソコンを駆使して、新しい仕事に励む毎日を送っています。 |
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2005 YMCA College of Medical&Human Services in Yonago.
All Rights Reserved.
|
|
|
|