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機関誌THE YMCA

THE YMCAは日本YMCA同盟が発行している機関誌です

<最新号のオピニオン>

能登半島地震 高齢化した半島で

大阪YMCA学校事業部長、グローバル事業グループ長 山根 一毅

 能登半島地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
 YMCAは1月7日から、石川県が「いしかわ総合スポーツセンター(金沢市)」に設置した「1.5次避難所」にスタッフを派遣しています。「1.5次避難所」とは、「1次避難所」で暮らすことが困難な高齢者や障がいのある方、妊婦、乳児などが、2次避難所に移るまでの中継地点として滞在する避難所です。YMCAは、内閣府およびJVOAD(全国災害ボランティア支援団体ネットワーク)からの要請を受け、熊本地震などでの支援経験を活かして、この避難所で運営アドバイザーを担うことになりました。

 要配慮・要支援者だけが集まる大規模避難所、しかも高齢者が9割を占めるという状況は、これまでの被災地では例を見ません。また、現実には滞在が長期化しており、一人ひとりの医療・保健・福祉的ケアには、医師や看護師、保健師、介護士、ソーシャルワーカーなど多くの専門家による支援が必要です。また、それら専門家たちの連携を築き、チームとして力を発揮できる体制を作れなければ、避難者の命や生活は守れません。YMCAは災害救援を専門とする団体ではありませんが、日ごろからボランティアコーディネートをしている団体として、県職員の方々や各専門家と共に最善の支援ができる体制作りに取り組んできました。

 避難所では、避難者も支援者も日々入れ替わりますし、被災地の状況も刻々と変わります。その目まぐるしく変化する状況下で確実なケアを提供すると同時に、2次避難へと繋げるために、私たちは医療と福祉の両面でどのように避難者を支えるかを話し合う連携会議を定期的に行っています。また、避難者の体調やニーズを共有するために、ICTの専門家の協力も得て情報管理システムの整備にも取り組んでいます。

 これまでの災害復興支援での経験や他団体とのネットワークにより、授乳室や子どもの遊び場を設けたり、ペットの居場所を確保するなど、環境の整備にも配慮。「避難所の扉が重くて開けにくい」「足が悪くて足踏み式の消毒薬を使えない」など、日々の困りごとを見落とさない「アリの眼」も持つよう心がけています。

 「災害から生き延びた命を、避難生活で失ってはいけない」と、メディアでも言われています。災害に限らず、一人ひとりの命を大切にすること、人権を尊重することがYMCAの原点です。「避難所は不便でも仕方ない」と避難者に我慢を強いるのではなく、避難生活のQOL(生活の質)を高めていけるよう最大限の工夫をするのが私たちの役目だと思います。避難所の初期の食事はパンかおにぎりになる場合が多いですが、金沢市内ではレストランも営業していましたので、ビュッフェ形式でご自身の体調に合った好きな食べ物を選んでいただくことも可能では、とアドバイスしたこともありました。私たちがどんなに力を尽くしても、自宅より快適な避難所は作れません。そんな状況下でも、避難者が次のステップを踏み出す力が沸いてくるようにサポートしていくのが、私たちの使命だと考えます。

 1月24日からは東京YMCAが、輪島市の避難所サポートを開始しました。支援が次のフェーズに入ったら、富山YMCAを中心に全国で協働しながら、子どものリフレッシュプログラムやシニア向けのカフェ、健康体操などを実施予定です。東日本大震災の際にもYMCAは、こうしたプログラムを数年にわたって実施しました。
心の復興には歳月がかかります。能登半島の方々が、失われた日常を再建していく道のりに、寄り添っていけるYMCAでありたいと思います。  (1月29日 聞き手:編集部)


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